7月に入り、立て続けにフォレストリーダー(以降、FLの記述)研修に一部の科目の講師として参加してきました。FL研修は林業の担い手の中の現場技能者を育成する「緑の雇用事業」の一環として、主だった都道府県単位で実施されています。参加条件としては、林業の現場技能者として5年以上の経験を有する者であり、中には20年以上の経験を有する方もいます。研修科目は全7科目、17項目の単元に分かれています。私が講師として参加したのは、このうちの1科目「無災害の推進、チームワークとコミュニケーション、業務効率化の推進、組織と人のマネジメント」で、幅広い要素が含まれています。FLは現場でチーム(班)単位で仕事をする上でのリーダー(現場管理責任者)に必要な能力を身に付けることを目標としており、単なる現場技能者では無くリーダー論や指導論といった点についても学ぶ必要があります。私が参加したFL研修は、いずれも研修初日のいわゆるオリエンテーションも兼ねた時間に置かれていたため、今年度の研修のために改訂された研修生のための「FL研修の手引き」を活用して、研修の目的や位置づけ、FLのあるべき姿、研修全体の構成まで説明することができたので、研修生も研修における自分の目標設定がある程度できたのではないかと思います。

その一方で、これまでの林業の現場においては、伐倒・造材・運搬技術を身に付けることしか求められてこなかったり、自らも考えてこなかったという方も少なからず存在しており、「リーダーと言われても・・・」と戸惑った様子を見せる方もいました。
私は、この「伐倒・造材・運搬技術を身に付けることしか求められてこなかったり、自らも考えてこなかった」ことが林業の現場における大きな問題だと思っています。林業の現場で働く人を“作業員”という言い方をしています。現場の作業員は、自分以外の誰か(会社や森林組合の偉い方・上司等)が指示した通りに作業をすれば良いという考え方や、慣習が多くの林業経営体の中にあるように思えます。確かに、それでもよかった時代も過去にはあったのだと思います。ただ、林業の再生、成長産業化に本気で取り組むのであれば、林業経営体はもっと戦略的・戦術的に経営(事業)に取り組む必要があると考えます。森林資源、政策・制度、市場動向、雇用・働き方、人材育成、最先端技術等を科学的視点に立って分析し、ビジョンと計画に基づいて実践・改善していかなければ経営が成り立たなくなってくることは、既に多くの林業関係者は気づいているはずです。

それでいて何故動かないのか・・・。おそらく林業経営体の経営者(の考え方)が変わらない、変わりたくない、あるいは変えるにしてもどのように変えたらよいかわからないということが一番大きな要因だと考えます。勿論、経営者の世代交代や若返りが進み、改革に向けて動き出している経営体(者)も増えてきています。変わらない、変えたくない経営者はどうすることもできない(淘汰されてよいの)かもしれませんが、変えたいけど何をどうしてよいのかが分からないと本気で思っている経営体(者)に対しては何かしらのサポートができる、いや、もしそこに雇用されている若い担い手がいるのであれば、積極的にサポートをしていかなければいけないと思います。
改善・改革に向けた意欲と勇気のある経営体(者)の掘り起こしとサポートが出来るのであれば当社としても取り組んでいくつもりです。
当社は、森林・林業の業界で13年程仕事をさせていただいています。その内容は、広報・PR、CSR他様々ですが、やはりここ数年一番多いのが、森林保全と林業の成長産業化を目指すための担い手の育成事業です。担い手育成と言ってもその幅は広く、研修事業全体の体系づくりや各研修プログラムの企画・設計、設計した研修の運営(事務局)、研修や会議のファシリテーション(ファシリテーター)、一部科目の講師、個別の事業体の組織づくりやチームづくり等様々です。この中でも、研修の運営(事務局)とファシリテーターとして参加させていただく時間が一番多く、たくさんの研修生や講師等と一緒に様々な経験ができたことは、今日の当社そして私にとっての大きな財産になっています。合わせて、研修の効果を高めるためのファシリテーション(ファシリテーター)の重要性を森林・林業界における研修で普及させ、今では多くの研修で採用されるようになった一助を担えたこともうれしく思います。

同時に、今日を含め、当方がこれらの事業に関わらせていただいた時期は、森林・林業における政策の大きな転換期でもあります。今年度からは、森林経営管理制度や森林環境(譲与)税が導入されたこともあり、今後期待される森林・林業の担い手の役割も大きく変わってきました。また、それに伴い担い手の育成方法も変えていく必要があると考えています。その中で重要になってくることの一つが林業事業(経営)体の意識改革です。一言で言うと経営者や管理者のマネジメント力を高めるということ、つまりは事業体の収益に関することだけではなく、組織や人づくりに経営者や管理者が主体的に関わり、その力やノウハウを組織内で築き上げながら生産力を高めていくということです。当社では、これまで組織やチーム、人づくりを行いたいと希望する事業体のサポートにも携わってきましたが、その事業体が求める答えを直接出すようなことはしてきませんでした。その理由は明確です。組織や人づくりは、結局は自分達で何をすべきか考えて計画し実行、改善していかなければ成しとげられないものですし、何より第三者がすぐに効く改善策など提供できないからです。組織づくりや人づくりに必要なのは、相手が求めている答えを提供するコンサルティングでは無く、答えを自分達で考え導き出せるようにするコーチングだと私は考えています。時間は少しかかるかもしれませんが、組織や人づくりとはそういうものだと思います。また、誰かが用意した研修に行かせることは、知識や技術を身に付けるための動機付けになるかもしれませんが、人や組織はそれだけでは成長しません。研修も含め、自らの組織で何を目指し、そのためにどのような人材をどのように育成していくのか、その方法の一つとして研修等をどのように活かすのか、事業体の経営者や管理者が主体的になって、職員を巻き込みながら考え、築き上げていくことが大事であり、それこそが事業体そのものの成長と発展につながるのだと思っています。

それともう一つ、林業事業体(経営者や管理者)の意識改革と合わせて重要になってくるのが“指導者”としての森林施業プランナーとフォレストリーダー(FL)・フォレストマネージャー(FM)の能力向上です。これらの者は、それぞれに林業を推進していくための専門的な知識と技術を備えた技能者としてその活躍が期待されていますが、これまでは“専門的な”の中で“指導力”というものがさほど重要視されてきませんでした。各研修の中においても、指導力の重要性と実際の指導力向上方法についての学びの場はほとんどありません。何故なら、これまでの研修体系では、森林施業プランナー、FL・FMとも、先ずは個々の現場実践者としての知識・技術を身に付けてもらうことが目的であったからです。確かにこれまではそれで良かったのだと思います。ただ、時代が変わり、林業の成長産業化とそれに資する各技能者のキャリアアップの必要性が問われてきている昨今において、求められる担い手の役割も変わってきているのです。その中で今度最も重要になってくるのが、次の新たな担い手を育成する“指導者”の養成です。林業の現場における実際の制度においても、FLやFM研修を修了し大臣登録された者がOJT研修等の指導者になれるということになってきます。しかし、現在のFL・FM研修、さらにはプランナー研修等の体系、時間、内容(カリキュラム)において、本当の意味での指導力を身に付けてもらうにはとうてい無理があります。本来、個の実践者であるプランナー、FL・FMに必要なスキル(自分ができるようになること)と、昨今必要とされるようになった“指導力(人を導き、あるいはあることを教え、確実にそれらを身に付けてもらうこと)”に必要なスキルとは異なるものですので、この“指導力”を身に付ける学びの場は新たに設計・体系づける必要があると思っています。

森林・林業の成長産業化を図っていくためには、川中や川下を含め、この他にもたくさんの改善・改革が必要だと思いますが、その主たる一つである川上における担い手育成のあり方を見直す時期が来ていることは間違いありません。時代や状況に沿った意識改革策や、新たな人材育成のステージをどうつくるのか、今まさに重要なターニングポイントの上に立っているのだと思います。
当社では、これらについて関係各者に声(意見や提案)をあげながら、改善・改革、施策等の立案・実行・検証に取り組んでいく考えでいます。
 2019年2月12日に厚生労働省において、伐木作業等における労働災害を防止するために、労働安全衛生規則の一部を改正し、伐木作業等における安全対策を強化するという公布が出されました。これには、林業における労働災害による死亡者数が年間40人前後で推移しており、平成23年度以降改善がみられていないこと。また、死亡災害の約6割がチェーンソーによる伐木作業時に発生しているということが背景にあるようです。
しかもこの改定で注目したいのが、その対象が、林業、土木工事業、造園工事業など、業種にかかわらず、伐木作業等を行う全ての業種となっているということです。つまりは、どのような業種でもあっても、チェーンソーを使って仕事をする全ての者が対象となるということです。

改正内容の詳細については、厚生労働省のホームページをご覧になっていただきたいのですが、主には「チェーンソーによる伐木等の業務に関する特別教育の内容の統合と時間の増加」、「伐倒作業時に受け口を作るべき立木の胸高直径を40僂ら20僂乏搬隋廖◆屬かり木の速やかな処理の義務付けと、かかり木の処理における禁止事項の規定」、「立木の高さの2倍に相当する距離を半径とする円形の内側に、伐倒作業をする労働者以外の労働者の立ち入りの禁止」、「チェーンソーによる伐木作業を行わせる事業者、作業を行う労働者に対する下肢の切創防止用保護衣の着用の義務付け」、その他の改正を行うとのことです。

死亡事故や災害を減らすために、このような改正を行うことは不可避なことだとは思いますが、これが守られなければ何の意味もありません。特に“林業の成長産業化”を目指す林業界にとっては、“確実に遵守する”越えなければならない大きなハードルでもあります。
伐木作業等を行う事業者やその労働者は小規模で、また常に現場で働く方々が多いため情報の周知に時間を要したり、その重要性と緊急性を十分に把握されていないこともあり、多方面から多手段によって当改定内容を周知させ、対応していただくよう促していく必要があります。
当社といたしましても、今年度もいくつかの研修事業や事業体へのサポート事業に携わらせていただくことになると思いますので、本件につきましては声を大にして訴求していくつもりです。
皆様方におかれましても、是非とも周知拡大へのご協力をいただけましたら幸いです。
 あくまでも個人的な見方ではありますが、私は3月中旬から4月中旬頃の1ケ月間が一年の中で最も季節の移り変わりを実感できる時期だと思っています。日本列島のあちこちで桜の開花情報が毎日のように聞こえてくる中、卒業や入学、入社他、人や社会の動きが変わるからということだけではありません。
 私はほぼ毎日、朝は自宅から会社まで徒歩で通勤しています。運動不足の解消と満員電車に乗りたくないというのがその理由です。大きな国道も歩けば、公園を横切ったり裏道を歩いたりもします。もう何年もそうしています。そしてこの時期に、次々に開花する花や樹木の葉と肌の輝きが日々増していく様子を見ることができます。例えば、桜ひとつとっても、河津桜が咲き始めた横ではソメイヨシノがつぼみをつけ、満開になって散り始めた頃に今度は八重桜が咲き始めます。また、その横では色様々なハナミズキの花がさりげなく咲きだします。銀杏や楠木をはじめ大きな樹木の葉も、そしてその根元にあるタンポポや雑草までも青々と光り出します。その周りでは小さな虫が飛び交い、鳥のさえずりも活発になります。日々変化するその移り変わりの速さには本当に驚かされるばかりです。都会のビルや道路の脇にある誰かが管理している小さな緑のエリアであっても、しっかりと自然の輝きと生命力を感じさせてくれるものです。

 ところで、今年度から森林環境譲与税が施行されますが、森林の整備等を直接行う森林がほとんどない都市部の区等では、木材製品の利活用や森林保全の重要性に係る啓発活動等にこの税が使われることになるものと思われます。公共施設に木材をたくさん使うということはとても良いことだと思いますが、区民等に対し前述した小さな都会の緑のエリアを使って、樹木や花の価値や自然の移り変わりのすばらしさを感じられる施策を提供し、身近な緑(森)を知ることから森林保全の重要性への気づきを促していくことも大切なのではないかと私は思っています。
都市部に住み忙しく働く人たち、特にサラリーマンの方々は、かなしいかな、身近にある木々や花の存在や変化、その輝きに気づかず毎日を過ごしているように思います。そのような方々に、どこか遠くにある森林の整備の重要性を伝えたところで実感がわかないのは当然のことだと思います。先ずは、身近にある木々や花に目を向けられるようなきっかけをつくり、木々や花に囲まれて暮らすことの意味や、それらを人の手で管理することの大切さを少しでも感じてもらうことができれば、どこか遠くにある森林と都市部を繋ぐことになるとは思いますし、環境譲与税(環境税)への理解が多少なりとも深まるのではないかと思います。
さて、どんなきっかけづくりができるのか、明日もまた徒歩で通勤しながら考えてみたいと思います。
昨今、林業の成長産業化を目指すべく、政府を中心に様々な法整備やあらたな制度が構築されてきておりますが、実際にそれらを遵守あるいは活用する林業経営体の方々の意識や組織体制はまだまだ追いついていないように思います。本来、競争の厳しい産業においては、あらたな法や制度等が導入されるとなると直ぐにその内容を検証し、競って対応策を考え、場合によっては組織の体制や仕組みまで変えるなど、勝ち抜くために多大なエネルギーを注ぐものだと思いますが、林業の場合は他の産業と事情が異なります。材料(資源)の所有者、収穫(伐倒・運材)者、製材・加工者、販売者等の多くが、それぞれ異なる経営体からなっており、特に所有者は個人、収穫者の多くは地域密着(限定)型の中小企業や森林組合が担っており、他の産業と比べて競争の原理が働きづらい業態なのだと思います。
また、林業経営体の多くが山村地域にあり、常に過疎化に伴う人材不足に悩まされています。林業というのは年間を通じて山に入り、木を伐り、木を伐り出す道を作って運び出す仕事をするわけですから決して楽な仕事ではありません。加えて所得(賃金)は平均的には一般のサラリーマンのそれと比較しても低いというところが多いこともあり、働き手不足は慢性化しています。
そして、何より残念なことは“林業は補助金がなければ成り立たない。そんな状況で経営改善や組織改革などする意味が無い”と思い込んでしまっている林業経営体の経営者が少なからずおられるということです。組織のトップがこのような考えでいるうちは、林業の成長産業化は夢の夢にすぎないように思います。

一方で、そのような状況下においても早々に組織改善や改革に取り組み、特に若い人達が中心となって地域産業を支えるほどまでに成長させている林業経営体も存在します。そのような経営体は、経営者がしっかりと“経営”をしているからこそという一言に尽きるのかもしれませんが、私が見る限りそれらの経営体は共通する二つのポイントを抑えているように思います。
先ず一つは、組織の中における「働きやすさ」の整備です。働きやすさとは、待遇(給与)の改善や安定化、安全装備等の支給、福利厚生の充実、休暇・休養制度、レクリエーション等従業員の心配や不安をできるだけ排除した職場環境を整備することです。勿論、待遇を急に良くすることは無理かもしれませんが、例えば雨天で現場作業ができない場合でも他の業務に回ってもらい、出来高ではなく月給制に変えて生活の安定を図るようにする。あるいは一定の休暇制度を導入し家族サービスができる時間を増やすなどいろいろ考えられます。ただ当然、これら全てを一律に改善できるものではなく、自分達にとって必要な(働きやすくなる)こととは何かを検討し、可能な範囲で導入するということです。
“働きやすさ”はすでに多くの一般企業では検討・改善されていることであり、若手や家族持ちの人材の確保や継続的な従事にもつながっています。今まで「働きやすさ」を追求することなどできない、やれないと思い込んでいたいくつもの林業経営体が改善しはじめているのも事実です。それが経営であり経営者の役割だと意識を変えたからこそ実現したのだと思います。
次に「働きがい」の提供です。実は前記した「働きやすさ」の整備には当然ながら限界があります。それは大方の従業員も理解できるはずです。ただ、人は面白いもので「働きやすさ」を提供すると一時的に不満を抱かなくなりますが、すぐにその状況になれてしまい、「もっと○○であれば・・・」という思いに駆られていくものです。その時こそ重要になってくるのが「働きがい」です。「働きがい」とは、ある程度の責任を持たせる仕事をしてもらうことです。責任を持つことを嫌う人であれば“期待”という言葉に置き換えてもよいかもしれません。その上で、それを達成するための目標を持たせ、それを経営者(上司)と共有し実行させ、その結果(成果)を認(褒)めてあげることです。人は他者に認めてもらうことで達成感や満足感を抱き成長していきます。また次のステージに上がるための動機付け(モチベーション)にもなります。勿論うまくいかないこともあると思いますが、その時は何故うまくいかなかったのか、どうすればうまくいくのかを自分で考えさせることが大切です。(それが分かることも達成感になります)
実は「働きがい」は「働きやすさ」より重要だと言われています。今日の林業経営体においては、どちらも検証・整備されていないところがある一方で、「働きやすさ」だけ改善を試みているところも少なくありません。ただ、前述したように「働きやすさ」の追及には経営的にも人間の心理的にも限界があります。成長している林業経営体は、その時の経営体の業況、事情に沿った「働きやすさ」と「働きがい」のバランスを考えながら整備しているように思います。

林業の成長産業化を現実のものにするためにも、その原動力となる林業経営体が何を大切にして組織づくりを行なっていくのか。「働きやすさ」と「働きがい」と言う視点から見直していただきたいと思いますし、様々な場面で当社からも働きかけていきたいと考えております。