当社では、会社を設立した1999年からずっと日本の森林や里山を保全するために、特に川下の企業や住民が関わっていくことの重要性を唱えつつ、そのための施策づくりや人材育成等に関わってきました。過疎化により大きな意味での社会力が衰退した山村地域には企業の経済力とマンパワーが一時的に必要であること、川下の企業、そしてそこで暮らす多くの住民すべてが、川上にある森林や里山の恩恵を受けているということ、そのありがたみを忘れず、それを自ら守って必要があるということへの気づきや行動を促していくということが目的です。心同じにする仲間もたくさんあり、また賛同者も増え、昨今では多くの企業と市民が日本の森林や里山保全に関わるようになってきました。

関わり方も様々で、都道府県や市町村のいわゆる「企業の森づくり制度(ある期間、一定の面積の山林等の植林・育林費用を企業が負担するかわりに○○会社の森と命名できる契約制度)」を利用する方法から、地域のNPOとの協働事業として手を組む方法、従業員やその家族等も一緒に参加する方法等々です。特に「企業の森づくり制度」に参加する企業は急激に増えてきました。只、「企業の森づくり制度」の契約期間の多くは5〜10年程度。以前当社が契約期間満了後についての対応をいくつかの企業にヒアリングしたところ、「地域にお返しする」と言った意見が多く聞かれました。確かに最終的にはそのような形になるでしょう。但し、どのような形で返すかが重要な問題です。CSRとして企業が森林や里山保全に取組む以上、その地域の中で継続的にその資源を守り活用できる仕組みを地域と一緒につくって返す必要があると思います。そこまでが企業の責任です。森林や里山保全に取組む企業のご担当者の方には是非とも真剣に考えていただきたいと願っています。

当社もその中の一社であることは言うまでもありません・・・。
今、「エネルギー」という言葉からまず連想されるのは、ガス・電気・石油といったものかもしれません。
しかし、少し時代を遡れば、社会が必要とするエネルギーの多くを炭や薪といった日本の森林資源でまかなっていました。また今でこそ、そのほとんどが輸入材を原料とする紙類も1960年代まで、その原料は国産材でした。

森林はエネルギーや物質を生産する機能を持ちます。
鉄筋コンクリート建築の普及や石油の活用が一般化する中で、日本における木材の消費量は1973年をピークに減少傾向にあるものの、私たちの経済社会は現在でも、莫大な森林資源を必要としていることには変わりはありません。
しかしその一方で、日本の森林は大きく変化しました。
日本で消費される森林資源が輸入材になり、木材を切り出しても採算が合わなくなった日本の森林(人工林)は、必要な整備作業が滞っているために荒廃しているのです。

それは、二酸化炭素を吸収するなど、森林が持つ多機能性の低下につながります。

この状況を受けて、林野庁は、平成17年度から「木づかい運動」と名づけた国民運動を展開しています。国産材を活用することが人工林の荒廃をくいとめ、森林がもつ多機能性を維持するために重要だからです。このような動きの中でも、企業による取り組みが期待されています。

すでに一部の企業では間伐材商品を積極的に購入したり、燃料資源としての木質バイオマスの利用を進めるなどの先進的な取り組みに着手しています。このような国産材の利用は新しい地方産業づくりや地域社会の活性化にも貢献できます。

近年、「国産材=コスト高」という既成概念も一部崩れてきている中で、環境保全や社会貢献といった視点からも木材や国産材の価値を捉えなおすることが必要です。
今までの発想を転換すれば、社会における企業価値やブランドイメージの向上につながる国産材の活用も見えてきます。

企業活動と森林資源との関わりは今も昔もその消費という観点から切っても切れないものです。しかしそれが、再生産可能な森林資源を荒廃させたり、枯渇するまで森林資源を消費し続けるといった関わりであっては持続的な社会に貢献する企業とは言えません。
これからの企業には、国産材の利活用を通して、日本の森林の健全化や石油製品に変わるバイオマス資源の普及に貢献するといった、森林との新しい関わりを見出すことが必要ではないでしょうか。
林野庁は2004年に「森林セラピー研究会」を立ち上げました。
同研究会によると森林セラピーとは「森林の地形や自然を利用した医療、リハビリテーション、カウンセリング」および「森林浴、森林レクリエーションを通じた健康回復・維持・増進活動」のこと。

また森林セラピーの代名詞とも言える「森林浴」は、森林の樹木が放つ「フィトンチッド」を浴びることとされます。このフィトンチッドとは、殺菌力のある揮発性物質のことで、本来は樹木の葉や幹が昆虫などに食べられないようにしたり、他の植物の成長を抑制したりするために放出されるのですが、人間が浴びると自律神経を安定させるなどしてリラクゼーション効果が得られると言います。さらにこの森林浴には肝臓機能の改善効果や、快適な睡眠をもたらす効果があるとも言われています。

このような「森林セラピー」という言葉や考え方は比較的新しいものかも知れませんが、山や森林は昔から各種スポーツやレクリエーションを楽しむ場として親しまれており、日常生活で疲れた現代人の心と体を癒す格好の場の一つと言えるでしょう。

一見して、このような森林の機能と企業はあまり関係がないと映るかも知れません。しかし、企業の森づくりとして、国や地方自治体からの借受林、あるいは社有林で森林保全活用に取り組する企業の中には、社員がボランティア活動に楽しく取り組むためにもレクリエーションを重視する傾向が見受けられます。また、社員の福利厚生やリフレッシュ休暇を目的に、ハイキングなどの森林でのレクリエーションを企画する企業や、保全・整備した事業所周辺の森林や緑地帯を地域に開放している企業もあります。
これらの取り組みはいずれも森林が持つ保健・レクリエーション機能を活用したものと言えます。

企業の社会的責任がますます求められ、社員が働きやすい職場の環境づくりをはじめに、消費者や地域住民との交流の促進、地域貢献等が重視される今日においては、人の精神をリラックスさせ、身体をも癒すという森林の価値は企業経営を考える上においても見直されるべきものではないでしょうか?
自然体験型の環境教育プログラムには、これまでの教育にない特徴があります。

その効果は、
もちろん子どもへの環境教育効果も高いのですが、企業の社員向け人材育成としても、下記のような能力を養うのに効果的であることが、これまでの経験から見えてきています。

(1)精神的な安定と集中力
パソコンの前を離れて屋外に出る開放感。
青い空、深い緑にあふれる自然の中は単純に気持ちがいいです。この「気持ちがいい」という感覚は、精神的な安定をもたらすとともに、集中力を高める効果があるとされています。
  
(2)状況の変化に対応する力
仕事をする上でハプニングや状況の変化が起きることはよくありますが、そうした時、瞬時に状況を判断し、適切な対応を柔軟に行うといった、臨機応変な対応が求められます。
人間の計算によって作られたものとは違う自然環境そのものが教材の自然体験型プログラムでは、思いがけないハプニングによく遭遇します。その際も瞬時に判断し、柔軟に対応していかなければなりません。状況の変化に対応する力を身につける機会がたくさんあります。
  ※このハプニングが思わぬ感動や驚きを与えてくるのも自然の魅力です。
  
(3)リーダーシップ、チームワーク
臨機応変に対応しなければならない状況化でのグループワークでは、リーダーシップをとりチームを導く役割を果たすメンバーが現れたり、チームでの協調性によってようやく1つの事が成し得えたりというシチュエーションになることが多い、また意図的に作り出すこともできます。
社内のチームでプロジェクトを進めなければならない時にも必要な能力とそのバランスを養うことができます。
※人事担当者の方が新人研修の一環でプログラムを組み込み、その個々にあった適正を見極める場合もあります。 
  
(4)”気づき”のセンス
サービスや営業、新規商品に開発においても大切なのは、
それを求める人の潜在ニーズを見つけ、掘り起こすことです。それには、相手や社会的なちょっとした変化に気づくことが重要ですが、自然の中ではこうした”気づき”のセンスを磨くことができます。
  
(5)自発的に行動する力
自然の中は何もかも与えられ、整った状況とは違います。
一人ひとりがその状況で判断し、どういった行動をすべきか、自分で考え、責任もった行動を行う機会を多く体験することで、自発性が養われていきます。
   
(6)自分と社会との”つながり”
五感を使って自然を感じることにより、想像ではわかりえない自然と人間との関わりを学ぶことができ、そこから自分と社会との様々な”つながり”を実感することができます。
このことによって、その後の環境問題への関心を高まったり、企業人として、社会に必要とされる存在になるにはどうしたらいいのか、自分で考え、行動する力を身につけるたりすることができます。

自然の場、特に多様な機能を持つ森林・里山には、人間が計算しきれない、あるいはつくることのできない”偶然”が多く存在します。

その偶然に出会えたとき、思いがけない感動や驚き、喜びを味わうことができるのです。その中から、新たな「価値(必然性)」をつくり出すプロセスこそ、これからのビジネスにとって学ぶべき重要な要素と考えています。
生物多様性を保全しようとするとき、森林は欠かせない場所です。

森林の中でも日本の場合、一般的には地域固有の植生をもつ混合広葉樹林のほうが、スギ・ヒノキの針葉樹の単純人工林よりも豊かな生物多様性をもつと言われています。

それでも、人々が山に入り間伐や枝打ちなど育林作業を行っていた頃の人工林は、充分森の中に光が入る環境が整えられていたので、豊かな下層植生があり、一定の生物多様性が保全されていました。しかし、安い外材が輸入されて林業の衰退が進むにつれ、人工林は荒廃しその生物多様性が保たれなくなってしまいました。今や、日中でも真っ暗で生き物がそこにいる気配すら全く感じられない人工林が日本各地にたくさん存在します。
つまり、人工林の整備は生物多様性保全の観点からも求められているわけです。

日本の森林の4割はこの人工林が占めていますが、その一部は企業が所有しています。
現在、森林を所有する企業は約2万社にのぼり、総面積は155万haにもののぼりますが、その中で、人工林の積極的な活用法を見出せている企業はどれぐらいあるのでしょうか?

人工林の価値は木材の生産だけと考えるのはいまや昔のことです。もし経済的価値が低いという理由で所有林を放置しているとなると、社会的責任を果たすことが求められる企業としては、生物多様性の観点からすると適切な行動とは言えません。

逆に、発想を変えて社会貢献活動の一環として活用することを考えてみれば、生物多様性保全のための森林整備として取り組むこともできます。たとえば、社員や消費者などのステークホルダーを巻き込みながら、森林保全活動を実施し、持続可能な社会づくりに貢献する企業であることを社内外にアピールする、あるいは環境教育や社内外コミュニケーションの場とする、といった新しい価値を生み出す活用方法です。

実際に「○○の森」と社名などを使ってネーミングした、社有林や借有林での森づくり活動に取り組む企業が増えています。
その取り組みは、純粋に生物多様性保全を目的とした森林整備活動であったり、社員のボランティア育成、地域や社員の交流と憩いの場としての森づくりなど様々です。

森林の現状をどのように見つめ、活用しているか。
それが企業の社会的な評価を導き出すひとつのモノサシになってきているのです。

日に150〜200種の生物が絶滅している―。
現在、かつてないスピードで生物種が絶滅する大絶滅期にあると言われ、国連環境計画(UNEP)は上記のような推定値を発表しています。また、92年の地球サミットでは「生物多様性条約」が採択され、2006年4月現在、日本を含む187か国及びECが締結国として「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という目標を掲げており、日本政府は「新・生物多様性国家戦略」を策定しています。

一方、産業界における生物多様性保全への取り組みは数限られているようです。
生物多様性条約締結会議は民間企業について「その活動が生物に重大な影響を与えているものの、条約実施への貢献が最も少ない利害関係者である」と指摘しています。

まず、自然資源や生物資源を利用する企業は、食品業界以外にも工業、医薬品、燃料など数を挙げれば切りがなく、それだけでも企業にとって生物多様性は考慮すべき課題です。また生物資源は質的にも注目されており、医薬品などはその3〜4割が生物由来です。今一刻と絶滅する生物種数の増加を考えると、私たちの経済・社会に有益な資源をみすみす失っていることになります。生物資源を従来から使用、消費し、また将来にわたっても利活用するだろう企業にとって、生物多様性保全というテーマは国際世論の動きとともに今後ますます大きな課題になってくるはずです。

さらに、生物多様性がもたらす恩恵は上記のような資源だけではありません。

生物多様性が豊かであるといわれる日本は、多雨で比較的温暖な気候、細長く標高差が大きい島国という地形で、その多様な環境条件に生き物がそれぞれ適応することで、多様な生物群を有しています。そして、その多様な環境条件は人間社会に、その地に生きるための知恵や伝統、そして文化をもたらしてきました。その良い例が里山や里山文化です。

実に日本における絶滅危惧種の約5割は里山に生息しています。
その直接的な原因は近代化や都市化が進み、里山が放置されていることですが、本質的な要因はその生産活動が地域の自然環境と調和していた生活文化を捨ててしまったことにあります。それはまさに資源を枯渇させることのない持続可能な社会への大きなヒントとなる生活文化であったと言えます。今、持続可能な開発や社会の実現を目標に掲げる企業にとって、このような里山や里山文化を再評価し、保全する意義は小さくはありません。

生物多様性が私たち人間にもたらす恩恵は計り知れないものです。
企業も同様にその恩恵を享受しており、現在危機にさらされている生物多様性保全への貢献が期待されています。

里山の保全活動は、単なる特定の絶滅危惧種保全に留まらず、かつて私たち日本人が持っていた持続可能な社会モデルについて学び、その実現に資することでもあります。

それは里山の雑木林に限ったことではなく、かつて建材などを供給していた人工林も適切な管理と受光条件によっては土地本来の広葉樹が育つなど生物多様性を確保しながらの森林管理が可能といわれており、今後はそういった施策や森づくりが求められます。

生物多様性を正しく理解しているか、どうか。
企業の環境経営や社会貢献活動についてそれを問う社会が、もうすぐそこまで来ているのではないでしょうか。
先月は、人工林の整備が行き届かなくなったことを背景に、「水」に関する森林の機能が危ぶまれていることにふれました(「企業と森林の関わり 〜水資源編」)。

しかし、森林の整備不足は同様に、「土」に関する機能も低下させています。

雨が降ったときの森林地帯と裸地(何も植生のない土地)の土砂流出量を比べると、森林は裸地の1000倍も土砂の流出を防ぐといわれています。
しかし、それも「森林の下層植生や落枝落葉が地表の浸食を抑制するとともに、森林の樹木が根を張り巡らすこと」によってはじめて機能します。

枝打ちや間伐などといった整備がなされないために、暗く、“もやし”のような細い木が密生している森林では、下層植生といわれる下草が生えることなく、また木々が根をのびのび太く長く伸ばせるはずもありません。つまり、下草が生えない森林では土砂の流出を防ぐ機能が低下せざるを得ないのです。

異常気象といわれる集中豪雨とあいまって、大規模な土砂崩れがたびたび報道されており、今後も山間部の土砂災害が懸念されます。それは長い時間をかけてつくられてきた土が流されることで、人に関わる災害だけでなく、森林の中に生き物が住む場所がなくなることも意味します。

本来、豊かな生態系を持つ森林が一度造林された後に放置され、日が差さないことから次第に生き物が住めない場所となり、さらには木々を支える土すら流出して少量の雨でも土砂崩れが起きる・・・

このようなことが現実に起こりはじめています。

この問題は一見、企業とは関わりないと思われがちです。
しかし、良質の大気や水を大量に必要とする製造業を営む企業は、山間部に工場を所有しています。そして、当然その周辺には工業で働く従業員やその家族、地域住民が生活しています。
普段あたりまえのように存在する森林であっても、大雨や地震などによる土砂災害が起きれば、その地域の産業基盤や生活基盤に大きな打撃を与えることになります。

さらに、その影響は山間部だけでなく下流域へ及ぶことも考えられるのです。その懸念の大きさは世論調査にも表れており、地域住民が最も期待する森林の機能とは、調査が始まって以来一貫して、土砂災害といった「災害防止機能」という結果になっています(内閣府「森林と生活に関する世論調査」)。

つまり企業にとって、森林の「土」を保持する機能を保全する取り組みとは、
単に地域環境を保全するだけではなく、企業自身の産業基盤の安定化や地域社会の保全に寄与するという意味を持つのです。
まさしく、今後の取り組みとして検討すべきCSR活動と言えるのではないでしょうか。

現在の日本では、
産業活動に使用される水(回収利用水を含む工業用水)として、
 年間530億立方メートル=琵琶湖2杯分弱の水を使用しています。


戦後復興と経済成長とともに企業は水を原料用、製品処理・洗浄用、ボイラー用、冷却用として大量に使用しており、1965年から2000年までの35年間でその使用量は約3倍にも増えました。このことだけを見ても経済行動の維持・発展に水が重要な役割を果たしていることが分かります。

日本では年間に世界平均の約2倍の雨が降りますが、一人あたりの降水量は世界平均の約4分の1足らずとなっています。さらに、降った雨が急勾配の川を一気に海まで流下してしまうという地形は日本の水利用を難しくしてきました。

しかし、このような不利な条件にある日本が「水の豊かな国」であるという、その背景には急峻な地形を覆う豊かな森林があります。
木のない土地に比べると、森林は3倍以上の雨水を土中に浸透させることができ、降った雨の35%を地下水にするといわれてます。このことにより、河川に流れ出る水量を平均化して洪水や渇水を緩和し、さらに、地中を流れる過程ではその雨水を浄化していきます(森林の水源涵養機能)。


現在、危惧されているのがこの水源涵養機能の低下です。


健全な森林は、小動物や微生物の活動によって無数の穴が土に開いており、まるでスポンジのようになっています。しかし、日本の森林面積の4割を占める人工林の多くは、間伐などの手入れが行き届かずに地面に光が差さないために、下層植生といわれる草木が育つことができません。その結果、小動物や微生物の活動は低下して土壌の保水力は減少し、森林の水源涵養機能も低減するおそれがあるのです。

環境に配慮した経営を考える企業は、まずは可能な限りの省エネや省資源に取り組むのが常です。その中で水資源の節約を掲げる企業は多く、また日本の工業用水については水の再利用(回収利用)を推進するなどの努力がなされてきました。

しかし、
森林が荒廃しているということは
   「水の豊かな国」の土台が揺るいでいる、
ということです。

大量の水を利用する企業にとって、森林保全・整備活動に積極的に携わるべき明確な理由がここにあります。
ある企業の環境報告書で、
「カーボンニュートラル会議を実現するために
                ○○本の植林をしました。」


という文章を目にしました。

「カーボンニュートラル会議」とは会議のために排出した二酸化炭素と同等量の「二酸化炭素を吸収する」ために植林をしたので、結果として全体でみるとこの会議の実施に関して大気中に二酸化炭素を排出していませんということです。

参加者が会場に移動するための交通機関の利用や、会議室の照明や空調など、二酸化炭素をできるだけ排出しない工夫はできても、それを全く排出しない会議を実現するというの現実的でありません。
しかしこの会議には、「排出抑制努力」だけに甘んじることなく、森林による二酸化炭素の固定吸収機能を活かすことで、排出してしまった分は責任をとろうという発想があります。

現在、オフィスや工場で二酸化炭素の「排出抑制」に取り組む企業は多くあります。しかし、二酸化炭素の「固定吸収」に取り組む企業はまだまだ少ないのが現状です。
実際に、日本は京都議定書において森林を整備することで3.9%分の二酸化炭素の「固定吸収」が認められています*が、その肝心の森林整備がなかなか進んでいません。

 *このコラム掲載後、政府が森林整備による二酸化炭素の吸収目標を3.9%
  から3.8%に修正したと発表しました。
  これは、基準年となる1990年の二酸化炭素排出量が当初の計上よりも増加
  したことによります。森林整備によって、京都議定書上、吸収量として
  計上できる量(1300 万炭素トン)に変更はありません。


日本の森林は、林業の衰退とともに整備が行き届かなくなっており、
このままでは、森林を整備することで認められた二酸化炭素の吸収量の3.9%に届かず2.9%を満たすか否か、という予測がされています。

政府が提唱する「国民参加の森づくり」の基、現在多くのNPOや市民団体が様々な活動に取り組むようになりましたが達成目標から考えると不十分な状況です。

もし森林整備による二酸化炭素吸収が2.9%に留まるとすると、未達成の1%分をどこかで補わなければなりません。そのしわ寄せは、排出の割合が一番多い産業部門、つまり企業にのしかかってくることが考えられます。

環境経営の重要課題に地球温暖化問題を挙げる企業は多くあります。しかし、京都議定書にあるように、地球温暖化への解決には「排出抑制」と「森林による固定吸収」の2軸で取り組む必要があります。

進まない森林整備と京都議定書の約束の期間が近づくにつれ、今後、
「森林による固定吸収」にその企業がどのように取り組んでいるかということでその企業価値が問われることになると考えられます。
企業として森林への取り組みを始めたい。

そのためには、「なぜその企業が森林への取り組みを行うのか」
社内を説得し、ステークホルダーや消費者へのプロモーションを行うためにも、その企業の特徴と、社会的背景から企業と森林の関わりを明確に理解していなければいけません。

例えば、

ある飲料メーカーは、
水資源を使用しているので水源の森づくりを行っている。

あるエネルギー会社は、
エネルギーを生産・使用するときにCO2を排出するので森を育てている。

自然資源から商品を生産している企業、
環境への負荷を促進してしまう企業。

このような企業にとって森林への取り組み理由は非常に分かりやすく、明確です。
そして、実際にこの2社は企業ブランドイメージを高めるためのプロモーションとして森林への取り組みを積極的にPRしています。

しかし、森林は綺麗な水を安定供給する、空気を浄化させる、生命を育む、木材・紙資源を供給する、保健休養など、多様な機能を果たしているため、企業と森林との関わりを紐解くと、ほどんどの企業が森林となんらかの関わりがあることがわかります。

例えば、水・紙・電気を全く使用しない企業はありません。
原料や商品の輸入・輸出、また国内での物流でも膨大なエネルギーが使用され、大量のCO2を排出しています。

また企業の社会的責任においても、私たちの暮らしを支えている森林を守るといった、国内外の社会が求める企業としての役割にも応えなければいけません。

今後は、こうした企業と森林との関わりを社会的な動向も交えながら一つずつ紐解いていきますので、企業として森林への取り組みを考えている方のお役に立てればと思います。
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